令和7年2月9日の日記

日記
2025年02月09日

世界遺産アユタヤに行った。遺跡の街。歴史の積み重なりがむき出しになった場所で、レンガの壁も、崩れた仏像も、ただそこにあるだけで圧倒的な存在感を放っていた。遺跡を歩いていると、観光地というより「時間そのものの中に迷い込んだ」という気持ちになる。地面に積もる赤土の感触が妙に生々しくて、昔ここで誰かが歩いていたんだなと思うと、勝手に物語を妄想してしまった。

まずはレンタル自転車を借りて遺跡巡りを試みる。「風を切って走るの気持ちよさそう!」と意気込んでスタートしたものの、すぐに気づいた。アユタヤ、広すぎる。どこまで行っても遺跡に辿りつかないし。似たような建物が続きすぎて、方向感覚が完全に崩壊する。「あれ、さっきもここ通った?」を3回くらいやったところで完全に迷子。加えて、日差しが強烈すぎて、5分おきに「これは水を飲まないと死ぬやつだ」となる。

30分ほど彷徨った後、「もう無理、降参」と思い、適当な道端で自転車を停めてトゥクトゥクを捕まえることに。運転手のおじさんにるるぶを見せつつ「オススメの遺跡連れてって!」とお願いすると、「任せろ!」と勢いよく発進。こうして、トゥクトゥク遺跡ツアーが始まった。

しかし、ここで問題発生。最初の遺跡を見終わって戻ると、肝心のトゥクトゥクがいない。「えっ?」と焦るが、周りを見てもどのトゥクトゥクも似たような形で、おじさんの顔も曖昧。

「これはまずい」と思い、スマホの写真フォルダを漁ると、奇跡的に最初に撮ったトゥクトゥクの写真が残っていた。車体の派手なオレンジ、写り込んだナンバーを頼りに広い駐車場をうろうろすること10分。「あっ!!!」と声を上げると、おじさんが手を振ってくれていた。

「どこ行ってたの!」と笑いながら迎えられ、なんとか再会成功。この瞬間から、絶対にはぐれないように気をつけることを誓った。以降、トゥクトゥクを降りるたびに、現在地をチェックし、おじさんの服装を記憶し、座席のシートの形まで脳に焼き付けるようにした。

有名な「木の根に埋もれた仏頭」も見に行った。思ってたより小さいけど、存在感がすごい。まるで何百年も前から「ここにいるよ」と言い続けているみたいだった。観光客はみんなしゃがんで写真を撮っていて、撮影待ちの列ができていた。仏頭を見下ろしてはいけないというルールがあるらしい。こんなに観光客に囲まれながら、静かに佇んでいる仏頭の気持ちを考えると、ちょっと同情してしまう。

その後、象乗り体験へ。観光象がのっしのっしと歩いていて、「おお…デカい…」と圧倒される。せっかくだから乗ってみたけど、視界が高くなりすぎて「王になったのでは?」という気分になる。象使いのおじさんが「象は昔、戦でも活躍してたんだよ(多分こんな感じ)」と教えてくれて、そういえばアユタヤもビルマとの戦いで滅んだんだったな…と歴史を思い出す。象の上で過去と現在がぐるぐる回る。

そして象から降りた後も、すぐにトゥクトゥクの元へ。もう二度とはぐれるわけにはいかない。遠くからおじさんを見つけた時の安心感たるや、「お母さんがスーパーで見失った子どもを見つけた時の気持ち」と同じだと思う。

遺跡の街は、時間の流れが普通の場所とは違う気がする。アユタヤは滅びたけど、その名残は今もここにあって、人が集まり、象が歩き、仏頭が静かに佇んでいる。そしてトゥクトゥクはちゃんと待っていてくれた。最後に「また来てね!」とおじさんに送り出され、アユタヤを後にした。